【東広島版】相続した土地にアパートを建てるべきか?建築費高騰時代の判断基準

「相続した土地があるから、アパートでも建てようか」

東広島市でこういった相談が増えています。低金利・新NISA・節税——キーワードは魅力的に聞こえます。しかし今、2024年以降の建築費高騰が、この「常識」を根本から変えています。

この記事でわかること:

  • なぜ今「建てる」が危険なのか(建築費高騰の現実)
  • 「逆ザヤ」スキームの落とし穴
  • 現場が「建てない」を勧める判断基準
  • 建てる以外の賢い選択肢

1. 2024年以降の現実:建築費が「採算ライン」を超えてしまった

最近の相談で最も多く見るのが、建築費が高すぎて家賃収入では賄えないという状況です。

2023〜2024年にかけて建築費は大幅に上昇し、アパートの建築コストは数年前と比べて2〜3割以上高くなっています。一方で、家賃相場はそれほど上がっていません。

結果として、「2割(20%)空室が出ると、毎月自分のお金を家賃に補填しなければならない」という状況になるケースが増えています。

採算が取れないなら、やる意味はありません。借入金は少ないに越したことはない——しかし現実として、手元資金を十分に持っていらっしゃる方は少ない。 だから「借りて建てる」という選択が浮上するわけですが、その計算が今の建築費水準では成り立ちにくくなっています。


2. 「逆ザヤ」スキームの正体とリスク

最近流行しているのが、以下のようなスキームです。

  • 理論:年利1〜2%台の低いアパートローンを借りて建てる。手元資金は新NISAで年利4〜5%で運用する。
  • 幻想:ローンの支払利息より運用益が上回るから「実質タダ」で資産が作れる。

しかしこれには2つの致命的な欠陥があります。

欠陥①:NISAの運用益は「未確定」、ローン返済は「確定」
投資の利益で借金を返すという戦略は、確定した借金を不確定な利益で補おうとする非常に脆い計画です。

欠陥②:金利上昇で計算が一瞬で吹き飛ぶ
1.5%だったローン金利が2.5%に上がるだけで、当初の「逆ザヤ」の計算は崩壊します。今後の金利上昇局面では、このリスクは現実のものになりつつあります。


3. 【試算】東広島・1.2億円アパートの「理想」と「現実」

■ 物件概要

  • 軽量鉄骨造・2階建て(延床約90坪)
  • 建築費総額:1億1,880万円(税込)
  • 借入計画:1億2,000万円(諸費用含・30年返済)
  • 手元資金:1,000万円(新NISAで年利5%運用と想定)

■ パターン①:当初の計画(金利1.5%・満室時)

項目 金額
家賃収入(満室・5.5万円×10戸) +55.0万円
ローン返済 ▲41.4万円
運営経費(管理費・固定資産税等) ▲11.0万円
アパート収支 +2.6万円
NISA収益(月換算) +4.1万円
合計手残り 月々 +6.7万円

一見、月6.7万円の不労所得が手に入るように見えます。しかしここには「空室」と「金利上昇」という現場の現実が含まれていません。

■ パターン②:現実のリスクを適用(金利2.5%・2戸空室)

項目 金額
家賃収入(2戸空室) +44.0万円
ローン返済(金利2.5%) ▲47.4万円
運営経費 ▲8.2万円
アパート収支 ▲11.6万円(赤字)
NISA収益(月換算) +4.1万円
合計手残り 月々 ▲7.5万円(持ち出し)

金利が1%上がり、空室が2部屋出るだけで、毎月7.5万円が家計から消えていきます。 NISAで月4万円の利益が出ていても、それを上回る赤字です。


4. 現場が「建てない」を勧める3つの判断基準

■ ① 2割空室で持ち出しが発生するなら建てない

空室率20%(10戸なら2戸空き)で毎月自分のお金を補填しなければならない計画は、建てるべきではありません。アパート経営は「事業」です。事業単体で、空室率20%・金利上昇1%を耐え抜けない計画は中止してください。

■ ② 「節税」だけが目的になっている

相続税を減らすために借金してアパートを建てる。評価額は下がりますが、賃貸経営の収支が合わなければ、節税額以上の赤字を垂れ流すことになります。

■ ③ 生活動線を無視した立地

「自分の土地だから」という理由だけで、駅から遠く、コンビニも遠い場所にアパートを建てる。30年後の東広島を想像してください。空室リスクという見えないコストが家計を蝕みます。

また、「30年一括借り上げ(サブリース)だから安心」という言葉にも注意が必要です。契約書には数年ごとの賃料見直しが入っています。家賃が下がってもローン返済額は下がりません。


5. 建てる以外の賢い選択肢

土地を守ることは、必ずしも「建物を建てること」ではありません。現場で実際に喜ばれている選択肢です。

選択肢 特徴 向いている人
事業用定期借地 借金せず土地だけ貸して地代を得る リスクを取りたくない方
駐車場・資材置き場 初期投資を抑えて収益化 次世代の判断余地を残したい方
売却して資産組み換え 管理しきれない土地を売却し流動性の高い資産に 将来の管理負担を減らしたい方

土地活用の選択肢の詳細は広島の土地活用完全ガイドもあわせてご覧ください。


6. 活用と売却、どちらが得か?比較表

比較項目 アパート建築(1.2億円借入) 土地売却+新NISA運用
リスクの正体 金利上昇・空室・修繕費・家賃下落 元本割れ・インフレ
毎月の手間 管理会社対応・トラブル対応 なし(放置でOK)
30年後の姿 築30年の建物+土地 運用された現金(流動性が高い)
判断基準 「事業」としてやりたいか? 「次世代に楽をさせたい」か?

7. 「建てない決断」が最善になるとき

「先祖代々の土地だから、売るのは忍びない」というお気持ちもよく分かります。しかし、無理な活用で借金を残すことこそ、先祖に対しても次世代に対しても不誠実な結果になりかねません。

1.2億円という大金を動かす前に、一度立ち止まってください。
その計画書にある家賃は、10年後も維持できますか?

計画を持ち込まれた際は、現場の実例と数字を照らし合わせて、忖度なしでお伝えします。

相続した土地の活用で悩んでいる方は、東広島市の相続不動産 放置リスクと出口戦略もご参照ください。


セカンドオピニオンとしてご相談ください

「建てる・建てない」の判断は、計画書の数字だけでは見えません。現場の実態と照らし合わせた診断が必要です。

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