
はじめに
「近所の畑が○○万円で売れたらしい」 そんな噂を聞いて、「自分の農地も高く売れるのでは?」と期待したことはありませんか? しかし、農地の価格は「隣の土地だから同じくらいの価格」という常識が通用しません。
なぜなら、その農地が「農業をするための土地(純農地)」と見なされるか、「家が建つ土地(転用期待地)」と見なされるかで、価格に10倍〜100倍もの開きが出るからです。 本記事では、農地特有の価格形成の仕組みと、査定額を左右するポイント、そして見落としがちな税金の落とし穴について解説します。
1. 農地価格の「二重構造」とは?
(令和5年 田畑売買価格等に関する独自調査結果)によると、農地の取引価格は以下の2つのカテゴリーで全く異なります。
① 純農地(農地のまま利用)
- 価格基準: 「農業をしてどれだけ利益が出るか(収益還元価格)」で決まります。
- 相場感: 非常に安価です。地域によっては「タダでも引き取り手がいない」ケースもあります。
- 査定ポイント: 日当たり、水はけ、農業用水の利便性、トラクターが入れる道幅があるかなどが重視されます。
② 転用期待地(宅地化を見越した農地)
- 価格基準: 「近隣の宅地価格」から「造成費用(農地を宅地にする工事費)」を引いた価格(比準価格)になります。
- 相場感: 比較的高値が期待できます。市街地に近いほど高くなります。
- 査定ポイント: 前面道路の幅員、上下水道の整備状況、スーパーや学校までの距離などが重視されます。※※注意※※ 個人の方が土地を複数に割って、宅地を売却することは宅建業にあたり、宅地建物取引業免許を持っていない場合は宅地分譲ができません。
2. 農地を高く売るための「条件」

あなたの農地が「高く売れる(転用できる)」可能性があるかどうか、以下のチェックポイントを確認してみましょう。
- 「市街化区域」に入っているか? これが最も決定的な要素です。市街化区域内の農地は、基本的に宅地への転用が認められているため、資産価値が高くなります。
- 「農用地区域(青地)」から外れているか? 農業振興地域内の「農用地区域(通称:青地)」に指定されていると、原則として農地以外の利用ができません。これを外す(除外申請)のは非常にハードルが高く、時間もかかります。
- 道路に接しているか? 建築基準法上の道路に2メートル以上接していないと、家を建てることができません(接道義務)。
3. 【要注意】売却時にかかる「税金」の落とし穴

「売れた!」と喜ぶ前に、税金のことを知っておかないと後悔することになります。特に注意すべきは「相続税の納税猶予」を受けている場合です。
譲渡所得税(儲けに対する税金)
農地を売って利益が出た場合、その利益に対して税金がかかります。所有期間が5年を超えている場合は約20%、5年以下の場合は約40%の高い税率が適用されます。 ※「800万円の特別控除(農地保有の合理化等のために売った場合)」などの特例が使える場合もあります。
相続税の納税猶予の打ち切りリスク
農業を続けることを条件に、相続税の支払いを待ってもらっている(猶予されている)農地を売却すると、「猶予されていた本税」+「猶予期間の利子税」をまとめて支払わなければなりません。 売却代金よりも納税額の方が高くなってしまうケースさえあるため、売却前に必ず税務署や税理士へ確認が必要です。
まとめ
農地の価格は「立地」と「法的規制(転用可能か)」で決まります。 まずはJAや不動産会社に査定を依頼し、自分の農地が「純農地」なのか「転用期待地」なのかを把握することから始めましょう。そして、売却益だけでなく「手残りがいくらになるか(税引後)」をシミュレーションすることが重要です。
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